東京で進む大規模再開発は、華やかな施設の誕生の裏で、かつてのような「賑わい」を生み出せていないとの指摘が相次いでいます。晴海フラッグや麻布台ヒルズ、渋谷サクラステージといった鳴り物入りでオープンした施設でさえ、人の流れをうまく作れていない現状があります。その背景には、複合的な要因が絡み合っています。
近年の再開発が賑わい創出に苦戦している原因は、大きく分けて3つ考えられます。
失われた賑わいを取り戻すためには、これまでの開発思想からの転換が必要です。
建設費の高騰や人手不足は、デベロッパーやゼネコンにとって大きな逆風です。新宿駅西南口の再開発が工期未定となったように、事業の採算性は厳しくなっています。こうした状況下で、各社の戦略は二極化していくと考えられます。
東京駅周辺では、三菱地所の「TOKYO TORCH」や三井不動産の八重洲・日本橋エリアの再開発など、国家戦略特区事業として国際競争力強化を目的とした超大規模プロジェクトが進行中です。これらの開発は、オフィスや商業施設に加え、国際会議場やホテル、医療施設など多様な機能を盛り込み、単なるビルの建設に留まらない「街づくり」を目指しています。ここでは、企業のブランド力と豊富な資金力を持つ大手デベロッパーが主導権を握り続けるでしょう。しかし、彼らもまた、「賑わい」という課題に直面しており、今後はアートや文化イベントの誘致、スタートアップ企業との連携などを通じて、新たな価値創出を模索していくことになります。
一方、東京の北部(豊島区、足立区など)や東部(葛飾区、江戸川区など)で進められているタワーマンションを中心とした駅前再開発は、より地域に根ざした視点が求められます。これらのエリアでは、人口増加や防災機能の強化といった地域の課題解決に貢献することが重要になります。
総括として、東京の再開発は、単に新しく綺麗な建物を作る「ハード」の時代から、そこで人々がどう過ごし、どうコミュニティを形成していくかという「ソフト」を重視する時代へと転換点を迎えています。この変化に対応できるかどうかが、今後のデベロッパーやゼネコンの将来を大きく左右することになるでしょう。
参考動画:PIVOT 「ジェネリック都市に陥らない街づくり」牧野知弘氏