GENIUS法(ステーブルコインに関する法案)について
「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」は、米国のステーブルコインに特化した包括的な連邦規制枠組みを確立することを目的とした法案です。この法案は、上院を通過し、現在下院での審議を待っている段階です。
以下に、ステーブルコインに関するGENIUS法の主な詳細をまとめます。
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GENIUS法の定義と目的
- 支払いステーブルコインの定義: GENIUS法では、「支払いステーブルコイン」を、支払いまたは決済手段として使用される、あるいはそのように設計されたデジタル資産と定義しています。これは、固定された金額の貨幣的価値と償還義務があり、法定通貨に対して安定した価値を維持するように設計されています。
- 目的:
- 米ドルの優位性維持: デジタル決済における米ドルの優位性を維持・強化することを目指します。
- 消費者保護と市場の信頼性向上: ステーブルコインの健全性を高め、利用者保護と市場全体の信頼性を向上させます。
- イノベーションの促進: デジタル資産分野の健全な発展を促し、過度な規制でイノベーションを阻害しないように配慮しています。
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主な規定
GENIUS法は、以下の主要な規定を通じて、ステーブルコインの発行者と市場を規制します。
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発行者のライセンス制度
- 支払いステーブルコインの発行は、「許可された支払いステーブルコイン発行者」に限定されます。これは、連邦または州の規制当局によって承認された事業体に限られます。
- 連邦政府の監督下にある非銀行機関、または既存の銀行監督下にある連邦規制銀行が発行者となることができます。
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準備金要件
- 発行者は、発行済みの支払いステーブルコインと同額の準備金(1対1の裏付け)を維持することが義務付けられます。
- 準備金は、米ドル、短期国債、または同様の流動性の高い高品質な資産で保有する必要があります。
- 準備金の再担保や流用は原則として禁止されます。
- 少なくとも準備金の50%は現金または翌日物預金で保有することが求められます。
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透明性と開示義務
- 発行者は、準備金の構成と評価データを毎月公開し、年次で独立した会計監査法人による監査を受ける必要があります。
- 幹部による準備金の正確性の証明も義務付けられます。
- 顧客保護のため、連邦預金保険や政府の裏付けを暗示する虚偽の表示は禁止されます。
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資本規制・流動性基準・リスク管理
- 連邦および州の規制当局は、ステーブルコイン発行者に対して、資本要件、流動性基準、およびリスク管理基準を策定することが求められます。
- ただし、ステーブルコイン発行者は、従来の銀行に適用される自己資本規制からは免除されます。
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利息付与の禁止
- 支払いステーブルコイン発行者が、ステーブルコインの保有、使用、または保持のみに関連して、現金、トークン、その他の対価の形で利息や利回りを提供することは禁止されます。
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破産時の優先順位
- 発行者が破産した場合、ステーブルコイン保有者の請求権は、他のすべての請求権に優先することが明確にされます。
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外国の発行者とクロスボーダーリスク
- 外国のステーブルコイン発行体も、米国の市場でサービスを提供する場合、追加の精査と規制の対象となります。
- 米国財務省が同等の規制体制にあると判断し、米国当局の監督に同意した場合に限り、外国のステーブルコインが米国で提供されることが許可される可能性があります。
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法的分類
- 支払いステーブルコインは、有価証券やコモディティではないことが明確にされます。また、連邦政府によって保険がかけられるものではないことも明記されます。
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現在の状況
GENIUS法案(S. 1582)は、2025年6月17日に米国上院を68対30の超党派の賛成多数で可決されました。これは、米国のステーブルコイン規制における重要な進展と見なされています。現在は、下院での審議と最終的な法制化に向けて、他の関連法案との調整が行われる可能性があります。大統領は、下院がGENIUS法をできるだけ早く可決し、署名できるようにすることを求めています。
詳細については、以下の情報源もご参照ください。